読んだ本ログ

電車通勤マンなので、通勤途中に本を読みます。
「この本を読んだ」というのは頭に残るのですが、何らかのきっかけやキーワードがないと「どんな内容だったか」をだんだん忘れてしまう・・・ということで、備忘録兼読書感想文として残そうと思ったわけです。

読んだ順でもおすすめ順でも無いです。ただ、塩野七生先生の本にはだいぶ影響されているので上にあります。ローマ人の物語も完走したい(文庫本にして40巻超なのでハードルが高い)。

 

海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年

著:塩野七生
新潮文庫(全6巻)

タイトル通りヴェネツィア共和国の興亡について書かれた本で、とあるパラドゲー動画投稿者がおすすめしていたので読んだ本。
魚が採れるくらいしかない干潟に街を築き、しかも共和制で千年近く維持する・・・って縛りプレイか何か?と思わなくもないのだけど、このヴェネツィアは商業と外交によって乗り切ってしまうのである。実はパラドゲー経験者が操作してます・・・と言われてもおかしくないほど合理的に。

ヴェネツィア、中世~近世の常識で考えると本当に異端児で、破門されてもお構いなし。第四回十字軍では契約の履行・・・という名のもとでコンスタンティノープルを略奪しまくったくせに、金になるので聖地巡礼のための旅行プランを提供していたり。たびたび登場する「まずヴェネツィア人、次いでキリスト教徒」という言葉がすべてを語ってくれますが、これで千年近く、しかも共和制ながら政情不安はほぼ起きずに維持しています(もちろん直接民主制が採れる規模の国だった、というのもあるけれど)。
最終的にナポレオンに道路扱いされてしまったのが本当に残念。

航海の歴史で見ると、安定した定期航路を成立させたり、海賊船対策に船団航行を行ったりと、シーレーンって大切というのを教えてくれます。対峙するのがジェノヴァ人とか海賊(マルタ騎士団)とかなのだけど。
個人的には「キオッジャの戦い」が激熱ですき。あわや国が滅ぶか、みたいな状況から逆転していくんだけど、そこには知恵と努力と民から信頼された提督と海賊みたいなおじ様が…

そんなわけで、西洋やオリエントの歴史、海洋国家が好きならぜひ読んでほしいシリーズ。とても読みやすいのですらすら読めると思います。
商業、制海権の維持、造船技術、政治経済などのほか、市民の文化や祭事、芸術などなど隅々まで知ることができます。
一応断っておくと、塩野七生先生が書かれているのは「物語」であって「歴史」では無いので所々憶測が入っていたりします。が、史料や当時の文化や分かっている人物像などから書かれているので、読んでいて違和感は覚えないと思います。

この本のせいでガレー船はいいぞおじさんになりました。一度くらいはヴェネツィアを生で拝んでみたいけど観光問題が大変そうだよね。

 


 

皇帝フリードリッヒ二世の生涯

著:塩野七生
新潮文庫(上下巻)

聖地イェルサレムを開放するため血を流すか、交渉によって無血開城を成功させるか、どちらが正しき行いか。

中世キリスト社会(教皇派だけかも)としては前者が正しき行いなのである。異教徒と戦って解放するのが信仰に篤いとされる。・・・中世では。
現代の我々からすればただの蛮行でしかないのだけど、この当時のキリスト社会としてはこの価値観。死後天国に行きたくば・・・というやつですね。
十字軍に関しては著者の塩野七生が書いている「十字軍物語」で第1回から順にどんな様子だったか書かれているのでこちらもおすすめ。

さて、そんな中世盛期、この本の主人公たるフリードリヒ2世は交渉によって平和にイェルサレムを奪回に成功するのである。そもそも十字軍を後回しにしていて、故に教皇から破門されながら・・・といった状態でもあったのだけど。CK3で外交パーク取ると隣国を臣従させたりできるけど、その上位互換みたいな感じの話。

未来から転生してきました?みたいな人で、保守派の教皇からことごとく敵視されてしまうのが悲しき権力闘争。

皇帝と教皇の対立についても詳しいので、この当時のキリスト社会を知るのにいいと思います。
神聖ローマ帝国の内情を知れるので、「神聖でもローマでも帝国でもない」を雑に擦るのはやめようね!ってなります。多分。この頃はまだハプスブルク家のものでもないし。

 


 

お母さんは忙しくなるばかり 家事労働とテクノロジーの社会史

著:ルース・シュウォーツ・コーワン
訳:高橋雄造
法政大学出版局

タイトルに惹かれて読んだ本。
著者がアメリカ人なので、アメリカの一般家庭の話。なので日本人の一般家庭とはまた違うのだけど、産業革命以降に男は町へ労働に、女は家で家事を・・・となったのは何でだろう、という本。翻訳本なのと文量が中々多いので読むのはちょっと大変かも。

過去より生活水準が上がっているはずなのに、生活が楽になった感がないのは一体・・・?という疑問を分析してくれます。男は労働!女は家事が絶対の伝統!みたいな話では無く、役割が分かれた経緯もなるほどな、ってなります。実はU〇erとかって車輪の再発明かもしれない。

あくまで家事がメインなので、労働環境がどう変化したかはあんまり書かれていません。もちろん社会構造が今と昔じゃ違うし、というかアメリカの話なので割と異文化の話なのですが、こういう日常生活にフォーカスを当てるのは中々無いので興味をもったらぜひ。

ところで私は結婚するつもりがないので家事も労働もしなきゃならんのですが・・・メイドさんロボが家事をやってくれるのはいつになるんでしょうか。

 


 

世界史を大きく動かした植物

著:稲垣栄洋
PHP研究所

我々動物サイドから見ると不思議な方法で繁殖をする植物。食べるために栽培をする必要があるけど、それは種の繁栄としてみると・・・?
この本の中に出てくるトウモロコシ宇宙から来た植物説がすきです。

これだけだとオカルト本になってしまうのですが、ちゃんと植物の歴史を書いた本です。
もしかしなくてもお米が育つ環境って激強SSRなのでは・・・?と思う一方、実はヨーロッパの皆さんって食べるのに困る環境で大変っすね・・・って感じるかも(だからこそ海を渡る必要性ができて発展したのかも)。

そんな植物たちがどんな特性で、どんな理由で広まったのかを解説してくれます。
ボストン茶会事件やアヘン戦争、ジャガイモ飢饉・・・なんか某帝国に関する話が目立つ気もするけれど、世界史上で植物由来の話はそこそこ出てくるので「世界史を大きく動かした」とは間違っておらず。そんな植物に関する耕作や流通の歴史が書かれています。

ちなみにトウモロコシ宇宙から来た植物説ですが、あの可食部分が種のくせに硬い葉で覆われてる上に南米の山奥原産・・・本当に種の繁栄する気ある?という植物のくせに世界三大穀物なのである。これはやっぱり・・・?
気になったら読もう。Kindleだと無料で読めるかも。


中世イングランドの日常生活

著:トニ・マウント
訳:龍和子
原書房

まだグレートブリテンになって無い頃のイングランド。大陸の「中世ヨーロッパの一般的な生活」では無いのだろうけれど、当時のイングランドに焦点を当てた本。
もしもあなたがこの当時にタイムスリップしたら…という書かれ方で、一般的な村や町の生活が書かれています。

当然ファンタジー世界では無いので清潔感とかそんなものは無く、日曜日に教会で礼拝…という空間、実は相当臭かったのでは・・・というのが強く印象に残ってます。何故なら外套の保管場所は…
あんまり夢も希望もありませんが、中世イングランドの住民の生活様式がよく見えてきます。転生するならSkyrimのほうが良いかな・・・?

下記の「勇者の日常生活」と記憶が混ざってるかも。

 

中世ヨーロッパ 「勇者」の日常生活:日々の冒険からドラゴンとの「戦い」まで

著:ケイト・スティーヴンソン
訳:大槻 敦子
原書房

剣と魔法の中世ヨーロッパ風ファンタジー世界ではなく、本当の中世ヨーロッパに転生してしまったら?
そこはSkyrimよりも部外者に排他的で、ドラクエのように誰でも旅人に優しいわけがなく、エジンベアのほうがマシに感じるかもしれない・・・

と、中世ヨーロッパって実際どんな生活環境だったのかを書いた本です。タイトルから想像するものと少し違うかもしれない。
実際の宿屋の様子や中世の魔術に関する解説などなど、メインは「日常生活」のほう。
Skyrimで夜になると衛兵が松明を持って歩いているのは正しいようで、実際の中世で住民でもないのに松明を持たずに歩いてたらスタァップされても文句は言えないかもしれない。

読んでから時間が経ってしまっているので別の本だったら申し訳ないのだけど、議論になりがちなテーマの「中世のお風呂事情」が載ってたはず。
「村」ではあんまり入らず、「町」くらいの規模になるとパン屋の窯を熱源に風呂屋が開かれる・・・とか。そもそも「中世ヨーロッパ」が範囲広すぎ問題もあるので、解釈次第。

 


フォト・ストーリー エリザベス二世 女王陛下と英国王室の歴史

著:ロッド・グリーン
訳:龍 和子 
原書房

女王陛下が崩御される前に読んだ本。
別に王党派とかでは無いんですが、エリザベス二世好きです。笑顔が素敵なおばあちゃん良いよね…!

大戦の生き証人であり、戦後の英国を見届けることになったエリザベス二世の生涯を写真付きで書いた本(刊行・読んだ当時はまだご存命でした)。
戦時下では陸軍に志願してトラックの整備してたりするので、この時点で戦後の一般人たる我らでは敵いません。
一方で終戦時に町へお忍びで繰り出してお祭り騒ぎに乗じたり、結婚後のオーストラリア訪問時に夫婦喧嘩しちゃったり…と、やっぱり1人の人間らしいところも垣間見えるのも良いよね。
この辺りのエピソードは読むまで知らなかったので、好感度が上がった一冊でした。
他にもジョージ5世からなるウィンザー(ハノーファー)朝のことから、今なおお騒がせなロイヤルファミリーのことまで書かれています。ちょっとお高めな本ではありますが、現代に連なる王室入門にはおススメ。紅茶を飲みながらゆっくり読めると思います。

余談ですが、とやかく言われがちなイギリスくん、そんなに嫌いじゃないです。単に海洋国家が好きというのもありますが。
仮に近代で世界の帝国だったのがイギリスじゃなかったら…となった時、候補がフランスとかスペインとなると…うん。
ドイツ覇権なKaiserReich世界がマシかと言われるとそんなことは無いし…って考えるとまだマシな世界線を作ったとは思うのよね。

世界史のリテラシー イギリス国王とは、何か

著:君塚 直隆
NHK出版

名誉革命によって近世後半にして立憲君主制を成立させたイギリス。
他のヨーロッパの大国と比べて安定した体制を築いていた訳ですが、なぜ絶対君主制や共和制に傾かなかったのか(一時的に共和制は経験したけど)、という本です。別に王党派とか絶対王制万歳という訳でもないんですが、それはそれとして王様が居るって良いよね…と思います。我らが日本にも天皇陛下がおられますが、他の君主国とはちょっと事情が異なるので比較しにくいよね。

本書の前半は名誉革命までの道のり、後半は名誉革命後から現在までのイギリス王室の役割を書いています。
名誉革命自体は17世紀の出来事ですが、それ以前から議会の役割は大きかった…ということが解説されています。
ジョンくんが失地王になってしまった13世紀に作られたマグナ・カルタが分かりやすいですが、更にそれ以前にも「賢人会議」という議会が設けられており、王位継承の際などに影響を与えたようです。確かにイングランドの頃って王位継承問題が度々起こってる気がする。

後半に出てくるバジョットの「イギリス国政論」というのが印象的で、大雑把に言えば「議会は堅苦しい法制度を司る」「王家は象徴として民衆をまとめる役割を」と整理されているのがなるほどなってなりました。現実的な部分は議会に任せて制度化させ、王家は民衆の感情に訴えかけて結束させる…というハードとソフトの役割分担、というのが立憲君主制の利点としています。
それこそWW2のような国難の時代に大きな役割を果たせる訳で(英国王のスピーチ良いよね(2回目))。HoIで安定度に補正がかかったりするのもいい表現な気がする。

他のヨーロッパの国で見ると、対比になりそうなフランスくんは絶対君主制からのジャコバン派独裁、さらにナポレオンの台頭を許してしまったりと安定した体制を作れなかったし、ハプスブルク家も帝政ドイツも行き詰まったし。中小国は大国の手のひらの上…と考えると、王室と議会との絶妙なバランスで現代まで続いてるんだな…というのが見えてきます。

そんな訳で、対外的にはマイナス点の多いイギリスくんだけど、国家の存続という点では上手く立ち回っており、その秘訣が王室と議会の協調にある…というのが分かる一冊です。イギリスくんの強かさを学べる。
以前エリザベス二世の伝記を読んだり、HoIの影響でジョージ六世はそれなりに知ってたり(映画「英国王のスピーチ」良いよね)と偏った知識はあるのですが、更にウィンザー朝の解像度が上がった気がします。ジョージ五世もすごい有能だったんですね…!(Kaiserreichの初週に亡くなってしまうというイメージしかない)
そんな偏った知識以外にもイギリス王家を学べる本でした。

 


世界滅亡国家史

著:ギデオン・デフォー
訳:杉田真
サンマーク出版

かつてポーランドは分割され、スコットランドはイングランドと合同し・・・とかではなく、もっと短命だったり小さかったりした国家の紹介本。「国家史」というほど歴史について書いたわけではなく、数ページでさらっと紹介されるものがほとんど。ヴェネツィアのことを書くなら文庫本で6冊にもできるのを考えると紹介であってるはず。

まえがきに書かれているように、そもそも国家の定義というのが厄介な問題。満州国は大日本帝国さんが勝手に言ってるだけだし・・・といった感じでしたが、そもそも現代のように地図や地理がはっきりしていなかった時代はより曖昧な国(のようなもの)があった・・・というのがたくさん紹介されています。
川沿いに国境線を引いたら支流があったため空白地帯が・・・とか、先住民のいる部族の王を自称してみたり・・・とか、停戦協定の結果・・・とか。
日本も終戦の際に空白地帯が出来ちゃって自治政府を称した島があったはずなのですが、これは出てきませんでした。どこだっけ・・・?

世界がFalloutのようになるか、Starfieldのように惑星に入植地を・・・という時代が来ない限りは新しい国を作る機会は無い気がしますが、中途半端に独立宣言や自治政府を建てようとするのは良くなさそうです。筆者が言っているように少なくともイギリスに期待するのはやめておこう。

ヴィクトリア朝時代のインターネット

著:トム・スタンデージ
訳:服部 桂
ハヤカワ文庫NF

インターネット老人なので…とかは関係なく、純粋にタイトルで気になってた本。
腕木通信から始まる通信の高速化と、その後の電信による世界のネットワーク化、それによる出来事を書いた本です。
元々書かれたのが1990年代末、その後邦訳が00年代に出されたものの絶版となり、改めて最近になって文庫版として出されたようです。

読む前は電信って局地的な通信に使われてたんじゃないの?と思ってたんですが、交換局を介してアメリカ各地やヨーロッパ、更にはアジアまで海底ケーブルを繋いでおり、まさに「インターネット」となっていました。
電信とインターネットの共通性を書いていて、初めは理解されなかったもののその有用性が広まると爆発的に普及していったり、一方で悪用されたり…というのも重なります。
違うのは回線交換が人力という部分で、ここに従事していたオペレーターの話なんかも載っています。仕事が無い時は外部のオペレーター同士で交流していた…というのも現代のインターネットでも重なるのかもしれない(これは職場に寄るだろうけど)。
また、ラストワンマイルを繋ぐために気送管が登場するんですが、これもスチームパンク創作だと思ってました。産業革命の真っ只中、蒸気と鉄道と同じくらい当時の人々の生活を変えていった電信…そんな18世紀末〜19世紀中頃の話です。

電信の普及は世界が縮まり、これによって世界各地の相互理解が進んで平和になるはず…という言説も支持されていたようで、MGS3のシギントさんが想像していた世界は100年前にも空想されていたようです。
残念ながら現代インターネットは悪徳金儲けや陰謀論ばら撒き装置に成り下がっていますが、当時はまだ不特定多数と通信するわけでは無いので平和的なエピソードが多め。
わるい使い方としては「競馬の結果が地方の販売所に伝わる前に電信で結果を聞き、勝ち馬に乗る」とかはあったようです。まだ郵便の時代なので、結果も鉄道で送られていたらしくその前だったら馬券が買えてしまったらしい。これが光の速さ(オペレーターを介すから実際にはもっと遅いにしても)で伝わるようになる…というのも、産業革命による大きな変化ですき。

符号を知ってなければ使えない電信も、誰でも使える電話が発明されると過去の産物となるように…と言ったところで本書の締めくくりに。50年程度で移り変わったのが長いと見るか短いと見るか。
冒頭に書いたようにこの本が書かれたのは90年代末と、インターネットが少しずつ普及しはじめた時期。現代の人間が読むとインターネットそのものは過去の産物にはなっていませんが、使い方は文字から音声、動画に変わったのはあると思います。一部の人しか使えなかった過去の産物として見るならパソコン通信の方が近いのかもしれない。個人的にはもっとのんびり静かなインターネットのほうが好きなのだけど…変化を受け入れられないのも良くないよね。
インターネットが過去の産物となるならもっと手軽に誰でも…という技術になるけれど、光の速さで通信できてしまうのを考えると残るは空間とかになるんですかね。今のところVRChatとかってモノ好きなオタクしか使ってない気がするし、VRモノ流行るって言われて何年経ってるのよというのはあるけれど…


測る世界史 「世界の基準」となった7つの単位の物語

著:ピエロ・マルティン
訳:川島蓮
朝日新聞出版

世界には二つの単位系がある。わかりやすいメートル法と滅ぶべきヤード・ポンド法が。

・・・的な本かな、と思って読み始めたらしっかりと国際単位系の成り立ちから現在までを追っていた本。もちろんメートルやグラムとヤード・ポンド法のせいで探査衛星が墜落した話とかも出てくるんだけど、そんな単位系の違いではなく「いかに正確に測るのか」を追求した本。

例えば距離の単位、メートル。メートル原器を基にしても気温による変化や物質そのものの劣化を考えると、単位としては正確ではない。もっと「不変のもの」でなければ正確とは言えない。そこで登場するのが相対性理論・・・物理法則はこの宇宙で不変なものなのである。

そんな感じで話が展開していき、こちらも宇宙猫になりながら読みました。
物理が得意なわけではないのだけど(例えば揚力を理解するのにだいぶ時間がかかった人間なのである)、基準を定めるなら確かに物理法則ほど変わらないものはないのでしょう。
ほかの単位に関しても同様に「最終的には相対性理論をベースにするのがよい」とされる。分らんけど正しいのは分かる。


世界を変えた科学史: 2600年のサイエンスヒストリア

著:三澤信也
彩図社

教科書とかに出てくるのは、発明したり実用化したりした人の名前。
ではその科学者が0から発明したのか?と言われるとそうじゃないものもあって、先人が予見してたり、その時の技術水準じゃ検証できなかったり、神に反する行為とされたり。
そんな科学の世界における歴史を扱った本。おそらく高校生くらいを対象にした本なんじゃないかな…という書かれ方で、文量的にも読みやすい一冊でした。研究の世界ってプロジェクトXみたいな感じで面白いよね。

帰ってきたヒトラー

著:ティムール ヴェルメシュ
訳:森内薫
河出書房新社

ちょび髭おじさんが現代転生…というかタイムスリップして現代ドイツで再び有名人になる話(自殺したときの記憶が無いので現代転生で合ってるのかも)。
先に映画は見たことがあったのですが、面白かったので原作も読むことに。これはこれで良かったので映画を見た人にもオススメの一冊です。

映画は冴えないテレビマンのザヴァツキの視点で語られ、初めはただのそっくりさんお笑い芸人だと思われていたが…という内容でしたが、原作たる小説版は終始ちょび髭おじさん視点で語られていきます。
著者の分析が丁寧で、「確かにこんな行動をしそう」「こんな考え方をしそう」という説得力が凄まじいです。注釈が所々にあるので、あんまり知識が無くても安心(ナチス幹部の名前とかはともかく、さすがに我が闘争は読んだことが無いので引用部分が明記されてるのは大きい)。

地下壕で自殺する前の10日ほどの記憶が無く、気がつくと2010年代のベルリンにタイムスリップ。キオスクの店主に拾われ、新聞などで現代ドイツの状況を把握しつつ、テレビ局に拾われて有名になり…という流れは映画も一緒ですが、終盤の展開が少し違います。

ちょび髭視点で書かれているため、どこかでうっかり頷きそうになってしまったら著者の狙い通りのはず。あとがきに書かれていましたが、「いきなりユダヤ人虐殺を行ったのではなく、身近な所から支持を集めていった」という過程を読めます。
近代ドイツに触れると「ナチスは良いこともした論」に陥る人を見かけますが、その呪いを解くには良さそう。アカ組の皆さんは分かりやすく体制転覆を図ろうとしてるので警戒しやすい一方、こっちは今ある問題を改善しようとしているのが厄介。
そんな、何のために「良いこと」をするのかがちょび髭視点で見えてきます。若者が子を産むのは素晴らしい。その分だけ兵士を増強し、東方生存圏を確保できる…終始こんな感じな一方で、一般市民と対する時は日常の課題を取り上げてくるのが厄介。

ただ、これが書かれた2010年台半ばよりも(ドイツくんに限らず)あんまり世の中がよろしくなさそうな所が読んでてしんどいポイントかもしれない。我々も気づかないうちに…といったことが無ければ良いのだけど。


1984年

ディストピア小説入門編…とするのが正しいかはさておき、かの有名なジョージ・オーウェルの小説。当然がっつりディストピアで、救われません(付録は本編を読み終わってから読みましょう)。

書かれたのが1949年なので、書かれたのは冷戦が始まった頃。それでいながら全体主義体制の設定がすごく緻密に作られています。個人的には「二分間憎悪」が印象的。
幸運なことにこの本が書いた世界は今のところ訪れてませんが、わるいインターネットに依存している我々はニュースピークやテレスクリーンを発明してしまっているのかもしれません。

一応断っておくとディストピア小説大好き!とかでは全然なくて、単にHoI4に出てくるし有名どころのやつなので読んでおこう…くらいの動機。
実際のジョージオ・オーウェルもHoI4前後に生きてる人で、後述の動物農場に載っている「象を撃つ」とか「カタロニア讃歌」とかの短編を読むとこの当時の空気感が伝わってきます。
この辺りを読んでみると現代は遥かにマシだと思います。インターネットミームでゲラゲラ笑ってて平気だし。


動物農場

ジョージ・オーウェルの短編。四本足は偉い。二本足はもっと偉い。

農場の主であるおじいさんを追い出し、登場人物の動物が自分たちの楽園を作ろう!という話。
動物が主要キャラクターなのでほんわかストーリー・・・なはずが無く、悪賢い奴とか煽動された連中が出てきて段々と殺伐としていきます。
圧政に苦しむのは勘弁だけど、民主制は民主制でバグだらけなのよね・・・。

寓話で終わっていればいいのですが、ベースは史実から。
ソビエトがどうやって生まれたかをわかりやすく書いた本・・・というのはまた違う気がしますが、話のベースはロシア革命〜スターリン体制の成立まで。登場キャラクターもモデルがいます。段々と目標の「修正」が行われるのもソビエト的。後味が良い話では全然無いけど、読みやすくはあります。

 


日本プラモデル 世界との激闘史

戦後間もない頃からプラモデルの発展を書いた本。刊行が2019年末なので我らが美少女プラモデルは最後の方に少し登場するくらい(グラ子が出てきたりフミナ先輩が出てきたり)。
主軸はスケールモデルで書かれていますが、ホビー系も数多く登場します。「オタク」の解像度が少し古いような気もするけど。
ゴジラなどの特撮ブームから始まり、タミヤが陸上の覇権を握る一方でウォーターラインシリーズは静岡系4社の共同で模型化が進んだり、ガンプラやミニ四駆などのホビー化、艦これガルパンによるスケールモデル再燃…と、戦後から2010年代あたりまでを時系列順に書いています。
コトブキヤの民は(何故か)金型の話とかを聞く機会があったりするけれど、過去の話を知る機会はあんまり無いので面白かったです。バンダイも過去にスケールモデル作ってたのは知らなかった。
最近だとスケールモデルの海外メーカー進出も広がっているようなのですが、「何をキット化するのか」部分はなるほどなってなります。
元々模型店だったメーカーのガレージキット製作から自家製プラモデル販売までの道のりだったりも書かれていますが、こちらも名前を聞いたことがあるお店がちらほら。キット化されないなら自作する勢のつよつよ版…
遡った話を読んでみると、現代模型界は混沌としているかもしれません。

 


情報分析力

著:小泉悠
祥伝社

全裸中年男性こと小泉悠先生による、OSINTの技法をまとめた本。砕けた文章で書かれているので講義を聞いているイメージかもしれません。
ロシアのウクライナ侵略をほどほどに追ってはいたのですが、実際どんなことをしていたのかを知れます。
研究として行われているので中身はガチガチで、一般人がふんわり分析したーい程度の目標だとついていけない世界かも(何せ個人で衛星画像の契約してるくらいだし)。
ただ、すごく特別なことをしているかと言えば衛星契約くらいで、本当に地道にいろんな資料を集めたり実際に足を運んだ経験を元に・・・といった情報収集をされているので、全く真似できない訳では無いかもしれません。目標が外国の軍隊だとかなりマニアックではありますが。

なんらかの対象を追いかけたり分析するときの考え方を学べる一冊で、「一旦書き出してみよう」とか「(対象が外国であろうと)日本語の文章をまずは読め」とか、結局は地道な蓄積あるのみなんだな・・・というのが分かります。
こうやって読書感想文を書いてみると確かに頭の中にある情報ってまとまってはいないので、書いてみるのは効果的な気がします。

まとめに書かれてた「小説とかも読め」というのが個人的に印象に残ってて、これが全裸中年男性を産むんだな…ってなります。偏ってしまうと抜け出せなくなってしまうし。

10日間で学べるBlender4.0

著:M design
インプレス

やっぱり3Dプリンター技能あったほうが良いのかな…というのと、もしかしたら3Dモデルいじったりしたくなるかもな…で読んだ本。
この本を読む前くらいにバージョン3.xから4.xへ移行されたようで、ネット上の情報だと3.xで説明されていたり…というのもあって実践した時期的には新しめの本。ちょこちょこマイナーチェンジで項目名が変わってたりしてますが、4.xで学ぶには問題ないんじゃなかろうか。
1日1作ずつ作れたし(ただ3Dプリント前提だったのでマテリアルの設定とかは無視した)、少しずつ使う機能を増やしてレベルアップしながら習得できました。
最終的にミラーリングとかを使ってキャラクターづくりをするので、入門として良いと思います。ただし、ブーリアンが出てこないので分割するには別途学習が必要。

(個人的な)問題は3Dプリントを目標に入れてしまったことと、目標が特になかったのでそんなに熱意がなかったこと。
そもそも3Dプリンター自体の知識が皆無だったので、出力失敗時にモデル側の問題なのかプリンター側の問題なのかが判別つかなかったんですよね。
Blender側とスライサー側でスケールが違うのは理解できたんだけど、そもそも出力データが問題ないのかは…???
3Dプリンター用ならAutoCADが主流っぽいし、知識0で突撃するのは流石に無謀であった。
本自体に罪はないので再履修するときにまた読み返したい。プリンターくんはでかい置き物になってしまったが…。

「花と木の名前」1200がよくわかる図鑑

監修:阿武恒夫
主婦と生活社

読んだ本に入れるべきか微妙な気がするんだけど、時々読む図鑑。
アパート住まいだしガーデニング趣味があるわけでは無いんだけど、大変役に立つのである。

・・・「名前を決めてください」のときに。
プラモデルづくり、完成しそうなタイミングで名前を考え始めるんだけど、このときにパラパラめくる。
決め方は「色あい」「作った時期と開花時期」「語感」とか色々で、あとは別の言語での読み方にしてみたり…という感じなのだけど、他の皆さんはどうやってお名前を決めているのか気になる。

この使い方はやっぱり紙の本ならではの部分で、ググれば良いじゃんとか言われるかもしれないけど「一覧を眺める」という使い方だと紙に軍配が上がりました。視覚情報で分かりやすいって重要なのだ…
そんな訳で数ヶ月に一度出番がやってきます。人生で一番読んでる図鑑かも…

図鑑としての話をすると、開花時期順に載っているので季節のお花や植物を探すのに良さそう。収録数が多いので解説は短文ですが、育て方とかもちょこっと書かれています。
緑のある生活憧れるんだけど、虫苦手属なので手が出しにくいんだよね…

 


その他いろいろ

参考書とか読んだのが昔で詳しく覚えてない本とか。

イギリス史 YAMAKAWA SELECTION

編集:川北稔
山川文庫

ドイツ史 YAMAKAWA SELECTION

編集:木村靖二
山川文庫

山川の歴史書が良いよって見たので読んだ本。成り立ちから現代まで細かく書かれています。
あんまり遊んでないEU4の期間(1450~1850辺り)の補完に・・・と言いたいがちゃんと覚えたわけではない。いや、EU4で正史が学べるとも思えないけれど。
上の方でも書いたようにイギリスくんは何だかんだですき。ドイツくんは近代以降の流れは分かりやすいんだけど、それ以前は結構複雑だよね。
Hoi4の期間(1936~1945辺り)に知識が偏りすぎているので、忘れかけた頃に再履修しても良さそう。

教養としての「フランス史」の読み方

著:福井憲彦
PHP研究所

中からも外からも燃えやすいフランスくん。その可燃性について…という訳ではないけど、読んでるとこいついつも燃えてるな…という印象だった。
文章自体はとても読みやすかったです。

一冊でわかるアメリカ史

一冊でわかるイタリア史

監修:関眞興

一冊でわかるスペイン史

監修:水島治郎

一冊でわかる東欧史

監修:北原敦
河出書房新社

一冊でわかるシリーズ。すらすら読めるので入門編として良いよね。
英仏独辺りは本屋さんで見かけやすいけど、イタリアとかスペインは中々見かけない気がする。

一冊でわかる明治時代
一冊でわかる江戸時代

監修:大石学
河出書房新社

日本史はあんまり頭に入ってなくて、極論HoI4の年代たる1936〜1945辺りに偏った知識しかなく。
流石にどうなんだ…と遡るために読んだ本。
日本史本って一歩間違えると左右に傾いてそうで手が出しにくいんですよね(西欧史も変わらない気がするけど、一応他人事として受け取れるので)。

イスラエル 人類史上最もやっかいな問題

著:ダニエル・ソカッチ
訳:鬼澤 忍
NHK出版

やらかす1年前くらいに出た本で、イスラエルの本って珍しいなーと思って読んだ。
建国以前から中東戦争、現代まで詳しく書いてて、何で現政権があんな感じになったのかが分かります。なのでやらかした時に「あぁ・・・うん・・・」ってなってしまった。

冬戦争 Historia Talvisota

著:齋木伸生
イカロス出版

ミリタリーモノに触れると魅了されるであろうフィンランド軍。冬戦争の経過やフィンランド側の主要人物について解説した本。
「人員不足でこの地区の防衛に当たってたのが木こり100人」とかそんな状態だったのが読めます。

急降下爆撃

著:ハンス・ウルリヒ・ルーデル
訳: 並木 均
ホビージャパン

ミリタリーモノに触れると魅了されるであろうルーデル閣下の自著。
最初から無敗の爆撃王…とかそんなことはなく、元々戦闘機乗りを目指してたけどバトル・オブ・ブリテンで活躍できなかったり、Ju-87に乗ってからも何度か被撃墜があったりしてほへーってなった。
自著なのでちょび髭に魅了されてしまった部分も書かれています。

地中海の覇者 ガレー船

著:アンドレ・ジスベール / ルネ・ビュルレ
監修:深沢克己
訳:遠藤ゆかり / 塩見明子
創元社

ヴェネツィアとフランスのガレー船を書いた本。フランスって陸軍国なのでガレー船のイメージ無いんだけど、これは著者がフランス人だからだろうか。
レパントの海戦辺りを中心に、当時描かれた絵画や史料がカラーで載っていて情景を知るには良い一冊です。この時代の漕ぎ手の生活も分かる(盛期の健全な姿は海の都の物語が詳しい)。
ただ、レパントの海戦って「キリスト勢力がオスマン帝国に勝った」という大事な勝利ではあるんだけど、この頃のヴェネツィアは盛期を過ぎてるし、フランスも大航海時代に乗り遅れてる訳で…という気がしないでもない。地中海を中心とした時代の終わりというか…

キーワードでたどるキリスト教の歴史

林 信孝
日本キリスト教団出版局

それなりに世界史本(その大体が西洋史)を読みつつ、近世辺りまで大きな影響を持ってるキリスト教。
どこかで履修したほうが良いよな…と思いつつバチクソ警戒しながら読んだ本。色んな意味で扱いにくいので…
内容は誕生から各分派の成立とか考え方とかの紹介、といった感じなので安心でした。ブルアカで見かける用語がちょこちょこ出てきます(元ネタだから当然ではあるが)。

ビギナーズ・クラシックス 枕草子

著:清少納言

ビギナーズ・クラシックス 徒然草

著:吉田兼好
編:角川書店

ビギナーズ・クラシックス 方丈記(全)

著:鴨長明
編:武田友宏
角川ソフィア文庫
コロナ禍が始まった辺りで暇しそうだった時に読んでみようかー、で読んだ三大随筆。
昔の人ってどんな生活してたのかなー、というのが世界史本読む動機として大きいのですが、こちらは我らが日本の話なのでイメージしやすい。しかも面白い。
…と言いたいのだけど、方丈記だけ読破できなかった。コロナ禍に読んだのが絶対良くない。

高い城の男

著:フィリップ・K・ディック
訳:浅倉久志

1984年とセットで置いとくべきな気もするけど、読んだのがかなり前なのでこの欄。
どっちが先か忘れちゃったけどAmazonプライム版も途中まで見てた。この手の本にあんまり慣れてないからか難しいな…ってなった記憶。
日独が勝った世界線だけど日本人が考える日本っぽくはないのは覚えてる。

不思議の国のアリス

著:ルイス・キャロル
訳:矢川澄子

オタク10人並べて「アリスと言えば?」と聞いたら多分バラバラな答えが返ってくるはず。
それはさておき、きっかけは忘れちゃったけど海外文学を読んでみようみたいな感じで読んだ。
読みやすい文では無いんだけど、いろんな創作のモチーフになるのは分かるな…とは思った。「不思議な体験をした」という童話なんだけど、読んでる側も飽きない。